expert’s perspective 専門家から見た『三信マイカ』
絹雲母-セリサイト-の化粧品分野での今後の展開について
日本採掘唯一の高純度「絹雲母-セリサイト-」-東三河での出会い-
~植物療法士 森田 敦子~
東三河原産の高純度「絹雲母-セリサイト-」
私の母「森田泰子」は東三河の地で、長年、土壌・地質調査と研究を行っていました。
そして、北設楽郡東栄町にある三信鉱工株式会社で採掘される絹雲母-セリサイト-が、世界でも希少価値の高い、高純度の絹雲母-セリサイト-であることを知りました。
三信鉱工では、約80年前から絹雲母-セリサイト-を採掘しており、2024年現在では、日本国内で唯一の絹雲母-セリサイト-です。
この絹雲母-セリサイト-は、湿式分級処理により非粉砕処理では、世界最小レベルの粒子径(5µm未満)であり、且つ、不純物を最大限に除去した高純度のものです。
粒子径が小さいことにより、物理的特性と性能に優れた絹雲母-セリサイト-であり、私が手がける化粧品分野においても、有用であることを知りました。
まず物理的特性では、小さい粒子径であることから吸着性に優れ反応速度が早いです。
また、性能としては、塗料状に加工した場合、塗膜が均一になり、耐久性や耐候性が向上します。そして感触(肌ざわり)が滑らかになり、塗面との摩擦を軽減させます。
高純度・微粒子「絹雲母-セリサイト-」の化粧品分野への応用
この特徴は、化粧品分野ではパック剤の基剤に適しています。
株式会社Waphytoが開発した「クレイパック」は、この東三河原産の高純度で微細な絹雲母-セリサイト-を配合することで、シルクのような滑らかな肌ざわりを実現し、肌への負担を軽減させることができました。更に、優れた吸着性により、肌に密着し、皮脂汚れや不要な角質を除去することができます。また、肌への吸着性が優れていることで、クレイパックに配合した機能性植物エキスが、皮膚にしっかりとアプローチできることが期待できます。
この東三河産の絹雲母-セリサイト-は、化粧品分野に留まらず、様々な分野でも活用されており、今後、更に研究開発が進むものと期待される素材です。
森田 敦子(もりた あつこ)
植物療法士
株式会社 サンルイ・インターナッショナル 代表取締役
株式会社 Waphyto 代表取締役
フランスで体系化されたフィトテラピー(植物療法)と、日本で確立した本草学を組み合わせた「植物バイオメソドロジー」の第一人者。
化粧品からアメニティー、サプリメントなどの事業を幅広く行っている。
また「フェムテック」「デリケートゾーンケア」の先駆者としても知られる。
2023年、雑誌エル(ELLE)が選ぶ「世界を変える女性100人」に選出される。
高温固体潤滑剤としての絹雲母-セリサイト-の可能性
トライボロジーと絹雲母-セリサイト-
~名城大学 宇佐美 初彦 教授~
トライボロジーとは、潤滑や摩擦・摩耗・潤滑など「相対運動しながら互いに影響し合う表面の間に起こるすべての現象を対象とする科学と技術」のことです。
この中でも私は「持続的発展可能な社会構築に寄与する表面の不均質構造化による摩擦損失の低減」というテーマの研究を行っています。
身近なトライボロジーが関わる具体的な技術で言えば、ハードディスクの情報を読み取るスライダヘッド、自動車のブレーキやタイヤなどがわかりやすいですね。
それ以外にも、人工関節のように生体で機能する「バイオトライボロジー」、人工衛星のような宇宙空間で動作する「スペーストライボロジー」、そして地球のプレート同士の摩擦によって起こる地震の研究である「ジオトライボロジー」と、規模の異なるさまざまな現象に関与しています。
非常に幅広い分野にまたがる「分野横断基盤技術」といえるものではないでしょうか。
さらにトライボロジーによる影響の大きさがわかる話として、こんなエピソードがあります。60年ほど前にイギリス政府がケンブリッジ大学のジョスト教授に、潤滑の管理によってどれだけの省エネルギー化が可能なのか調査を依頼したことがありました。その結果、潤滑を適正化することでイギリスの国家予算の10%が賄われるという「Jostレポート※1」という報告が提出されたんです。その中で、摩擦を減らすことで直接的に得られる効果に加え、例えば機械保全費の削減や機械装置の長寿命化といった間接的な因子も含めるとトータルで5億ポンド、当時の為替レートでは5,000億円という経済効果が見込まれるということだったのです。そこからトライボロジーの重要性が認められたという経緯があります。
※1 出典:「 トライボロジーの基礎」
現在、こうした分野において取り組んでいるプロジェクトとして、「部品などの表面に特化して、接触する部分の機械的な性質を制御することで潤滑しやすい構造をつくること」を実施しています。
「滑る」というとバナナの皮で滑って転ぶことを思い浮かべる方も多いかと思いますが、これはバナナの皮のみが滑る原因を生んでいるのではなく、硬くてフラットな所にある柔らかなバナナを踏むことによって内在する潤滑成分が染み出すことで滑る原因が生まれるのです。
先に挙げた研究テーマの「表面の不均質構造化による摩擦損失の低減」は、まさに硬い床とバナナの皮のような「不均質」をコントロールして作ることで、油膜の切れにくい表面構造を機械部品で実現しようということなのです。
この材料として私が注目しているのが三信鉱工株式会社の「絹雲母-セリサイト-」です。世界中の化粧品にも用いられる高品質な絹雲母-セリサイト-が、どうやら非常によく滑る素材となる可能性が高いということで、主要アイテムとして位置付けています。具体的には、絹雲母-セリサイト-を軟質金属と混合して従来の鋼や鋳物、アルミニウム、あるいはチタン合金の表面に複合化し成膜することで新規の潤滑皮膜を形成し、潤滑油が使用できない高温や宇宙空間のような高真空で機能する摺動面を実現したいと考えています。
こうした技術は今後、自動車部品など摩擦・摩耗・潤滑が関わる部品が非常に多い分野に転用できないかと考えています。自動車だと油膜のような柔らかい層がなくなると故障の原因になってしまいます。この柔らかい層が絶たれることがないように表面に特化した材料をつくることで、産業社会の省エネルギー化につなげられればと思っています。
特に、潤滑油の代替として「絹雲母-セリサイト-」を利用した「潤滑水」ができないかと考えています。潤滑油もその廃棄は多くのコストが必要ですし、それよりも水を使うことで産業機械などの省エネルギー化を進めることで、環境負荷の軽減につながる、ひいてはサステナビリティといった現在の世界全体のテーマにも叶うのではないかと考えています。
宇佐美 初彦(うさみ はつひこ)
名城大学 理工学部材料機能工学科 教授
【専門】
トライボロジー、表面改質、材料加工
【受賞歴】
アメリカセラミックス協会優秀ポスター賞
日本機械学会功績賞(機素潤滑設計部門)
日本機械学会フェロー
ICM&P2022(International Conference on Materials and Processing, 日本機械学会機械材料・材料加工部門国際会議)優秀講演賞
【宇佐美教授URL】
名城大学:教授「宇佐美 初彦」
名城大学:育て達人「第134回 宇佐美 初彦」